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非認知能力について

NON-COGNITIVE SKILLS

​未来を生き抜くために必要な力「非認知能力」

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今、世界で注目されている「非認知能力」。生涯の学びを支え、人生を豊かにするために欠かせない力として、乳幼児教育の現場でも重要視されるようになってきました。

人間には大きく2つの資質があり、「認知能力」と「非認知能力」に分けられます。認知能力とは、計算や漢字、IQのようにテストで測定しやすい知的機能のことで、簡単に言えば「学力」です。

一方、非認知能力とは、意欲や関心・興味を持ち、粘り強く学びに向かう力や姿勢のほか、協調性、自己肯定感、創造力、問題発見・解決力など、総合的な人間力のこと。これらの能力は数値化することのできないものとして知られています。(※出典1)

​非認知能力はOECD(経済協力開発機構)でも注目され、「社会情動的スキル」と呼ばれており、具体的に「目標を達成する力」「他者と協働する力」「情動を制御する力」の3つに分類されています。(※出典2)

​非認知能力が注目された背景​

​非認知能力が重視され始めたのは、ノーベル経済学者であるジェームズ・ヘックマン教授が実施した「ペリー就学前教育プロジェクト」がきっかけといわれています。

これは、貧困世帯のアフリカ系アメリカ人の子ども達(3~4歳)を対象にして行われたプロジェクトで、子ども達をランダムに2つのグループに分け、一方のグループに2年間の「質の高い教育」を行いました。ここでの「質の高い教育」とは、子どもが主体となる活動をさせる、読み書きなどの認知能力を高める、週1回の家庭訪問で保護者とのコミュニケーションを図り親子のかかわり方を指導する等のプログラムのことをいいます。

そして、このプログラムを受けた子どもと受けなかった子どもを40年間にわたって追跡調査し、その後の人生にどのような影響が生じるのかを調べたのです。

​すると、子ども達が40歳になった際の高校卒業率、持ち家率、犯罪率、生活保護受給率、雇用等において、プログラムを受けたグループのほうが受けていないグループより優位であることが分かりました。

​ペリー就学前プロジェクトの効果(40歳時点)
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​(※出典3 データをもとに作成)
​ペリー就学前プロジェクトのIQへの影響
​(※出典3 データをもとに作成)

一見、その理由はIQの違いと思われがちですが、上のグラフのように5歳頃に顕著だったIQの差も10歳頃には目立たなくなり、ほぼ同じになっています。このことから、人生の成功や豊かな生活を送るためには、IQ等の認知能力以上に、数値化できない非認知能力の影響が大きいと考えられ始めたのです。​

​非認知能力はなぜ必要?

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非認知能力が高いと、目標達成のために必要な力、社会性、自己を確立する力のような「生き抜く力」「生きる土台」が備わります。自分から学ぶ姿勢があり、他者とのコミュニケーションがうまく取れることによって、社会において活躍できる機会も得やすくなり、豊かでより良い人生につながっていくと考えられているのです。

​◆VUCAの時代を生き抜くために

現代社会は「VUCA(ブーカ)」の時代と呼ばれています。これはVolatility(変動性)、Uncertainly(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもので、めまぐるしく変化を繰り返し、不安定で複雑かつ物事の良し悪しの曖昧な今の社会をうまく表している言葉です。

IT改革や新型コロナウイルスの流行などの影響で未来を予測しづらくなり、これまでの常識が通用しないことが増えた今、あらかじめ決まっている正解を導き出すための学力を鍛えるだけでは、この不安定な世の中を生き抜くことは難しいといわれるようになりました。そして、非認知能力のような、自分で考え、選び、他者とも協調しながら目の前の問題に柔軟に対応できる力の必要性がより重視されてきたのです。(※出典4)

​◆AIにはない生きる力

現代社会では急速にAI(人工知能)の活用が進んでいます。その結果、さまざまなことが自動化され、今後AIに代わられる職業が多数あるということも伝えられる事態になっています。

​とはいえ、AIにもできないことや苦手なことはあります。その代表的なものが、クリエイティビティーを必要とする創造的な作業や、人の気持ち(感情)を汲み取ることです。実際にはAIも絵を描いたり人の感情を分析したりという作業をしていますが、これは過去の膨大なデータをAIに学習させているからこそできることであり、AIがゼロから何かを作ったり感情を理解したりすることは難しいといわれています。(※出典5)

​クリエイティビティ―も、人への思いやりや共感力、協働性も非認知能力です。非認知能力を伸ばすことは、AI化の進む現代で生きていくためにも必要なことといえるでしょう。

​保育所保育指針の改訂

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非認知能力の重要性が注目されることにより、日本の乳幼児教育も変化してきました。2018年4月には、保育の基本的な考えやねらい、保育内容等が示されている「保育所保育指針」が大幅に改訂され、0~2歳児の保育についての内容も充実したものになりました。

この背景には、近年0~2歳児の保育所の利用が増加していることのほかに、非認知能力を伸ばすにはこの時期の保育がとても重要だとされることにもあります。

​この時期はさまざまなことの「土台」といわれる時期であり、それは非認知能力の育成においても例外ではありません。保護者や保育者とのあたたかなかかわりによって、子どもは愛されている実感からくる安心や信頼感を得ることができ、自ら意欲をもって活動することができるようになっていきます。

0~2歳児の保育は、これから心と体が成長していく子どものとって大変重要なものなのです。(※出典6)

のどか保育園の取り組み

のどか保育園では、保育所保育指針に沿った「子どもの主体性を育てる保育」を実践する中で、子どもの非認知能力の育成につながるさまざまな取り組みを行っています。

​◆子どもの主体性を育む物的環境構成

​園にある「物」について、子どもが自分で考え、自分で選び、自分で決められることを大切にし、園生活でのいろいろな場面で主体性を発揮できるような物的環境づくりに力を入れています。例えば遊びに関しては、発達に合わせて主体的に遊べるような玩具や教具、絵本等を準備し、それらを子どもが選んで自ら手に取ることのできる環境になるよう工夫しています。

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​◆高い専門性をもった職員が遊びの展開をサポート

高い専門性をもった職員による子どもの遊びの展開へのサポートも、欠かせないものとして重視しています。​

子どもの遊びは、展開していくとさまざまな学びをもたらしてくれます。

例えば水の感触遊び。はじめはいろいろな容器を使ってあけ移しをするところから始めたものが、絵の具を混ぜた色水遊び、さらなるあけ移しをして色の変化を知る遊び、それらを小麦粉に混ぜて色付きの粘土遊びへと拡がり、深まっていきます。

すると子どもたちは、一つのことに粘り強く取り組んだり、友だちと協力したり、「できた!」という成功体験を味わったり…と多くを体験することができ、非認知能力の高まりにつながっていくのです。

​遊びの展開は乳幼児期の子どもたちだけでできるものではなく、高い専門性をもった保育者のサポートが欠かせません。のどか保育園の職員は、乳幼児教育研究事業への参加やキャリアアップ研修などで高めた専門性をもって子どもとかかわり、遊びの中で生まれた展開のきっかけを見逃さず、それぞれの子どもに合ったアプローチで育ちにつなげていくよう努めています。

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​◆数概念の形成

CRAYONプロジェクトへの参加に伴い、数概念の形成に取り組んできました。「数」というと計算のような学力(認知能力)をイメージしがちですが、それだけではなく、非認知能力である推論能力や物事を見通す力、論理的思考力を伸ばすためにも欠かせないものであるといわれています。​

論理的思考とは、物事を客観的に見て骨組みをとらえ、筋道を立てて考えることです。そして、その考えを他者に分かりやすく説明できる力は、社会生活においてとても重要になってきます。この論理的思考を鍛えるために必要なのは、物事を順序立てたり分割したりして数学的に考える力です。学校での学習が算数から数学に移行する中学校の学習指導要領の中でも、数学を活用して論理的市区を養うことが目標とされています。(※出典7、8

この数学の基礎となるのが、数概念です。一般的に形成は3~6歳といわれていますが、日本の幼稚園や保育園のカリキュラムに数を意識したものはあまり多くありません。だからこそ必要であると感じ、のどか保育園では保育室に数や形に関するさまざまなものを置いたり活動に取り入れたりして、子どもたちが「数」に興味をもてるような環境をつくっています。

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【出典】

1:生涯の学びを支える「非認知能力」をどう育てるか『これからの幼児教育』ベネッセ総合教育研究所(2016年)

2:中内玲子(2020年)『シリコンバレー式 世界一の子育て』フローラル出版

3:James J.Heckman and Dimitriy V.Masterov."The Productivity Argument for Investing in Young Children."

4:非認知能力とあそび「保育の友 第69巻 第13号」全国社会福祉協議会(2021年)

5:久留米工業大学「人工知能ができること・できないことは何か?これからの世の中はどう変わる?」https://www.kurume-it.ac.jp/future/artificial-intelligence(参照2021-11-16)

6:ニッポンの幼児教育は、どう変わるのか?『これからの幼児教育』ベネッセ総合教育研究所(2017年)

7:斎藤成海(2010)「数学的な見方や考え方を基盤とした論理的な思考」(参照2021-12-2)

8:文部科学省「【数学編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」(参照2021-12-2)

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